ダンボールを使うクラフト学習 (米国の事例) 〔1〕
大隈紀和 執筆時:国立教育研究所・教材教具開発室)
教育メディア研究所発行 教材教具シリーズ(1)より


  このボートは確実に沈む。
100メートルでも長く川くだりをするために知恵が寄せられる。
冒険心や楽しみを添えて、科学の心が育まれる
。 
理科実験とって大切なことは、実験の意図(工夫)が、速やかに判ること。ダンボールでつくったボートは、工夫次第で川くだりの距離が変わってくる。結果がでるまで長い時間を要しないし、その結果は誰にでも判る。
この企画では、異なった人種に人たちが、「冒険心」をキーワードに、楽しみをもってチャレンジしている。

この文献は、1977年に執筆されたものです
【はじめに】
米国では身近にある材料を積極的に学習かつどうに使うことが、極めて盛んである。
たとえば、理科の分野には、「台所の物理」 (kitchen physics) などと呼ばれるものがある。
台所用品を物理の実験材料に取り入れていこうとするもので、理科ぎらいになりやすい子どもたちに、物理の実験が楽しめるように配慮してある。
例を上げればきりがないが、例えば、「しゃもじ」 や、容器を台所の壁面にぶらさげるための 「穴あきボード」 は、実験器具の組み立ての板にも、ぴったりで、これは 日本でも広く知られているものの一つである。
もうひとつの例を上げれば、薬の空びんを工夫して、アルコールランプにするなども、その典型のひとつである。
身近な材料を学習活動で思いっきり使わせようという行き方は、米国の国民性とも深くかかわっている。
  なんでも自分でするという精神、 (Do it youeself! )
が徹底している。
壁や床の修理、電気器具の点検、自動車のチューンアップなど、どれをとりあげても、本職に頼べば高くついてしまううえに、時間がかかる。
それなら、自分の手でやろうということになる。
どの程度、この精神が浸透しているかは、本屋さんの店頭の D.I.Y.コーナー (Do it youeself!のためのセレクション) の豊富な入門書、カタログ書、手引書の山を見ればわかる。
そして、なんでも使ってやろうという行き方は、ダンボールを使ったカリキュラムをつくり出すまでになっている。
本書は、筆者が 1971年と1972年および1977年に渡米した際に入手した資料や見聞したことにもとづいて、どんなことが行われているか、何が作られているか、などについて、いくつかの事例を紹介するものである。
なお、米国では、ダンボールのことを カードボード (cardboad) と呼んでいるが、本書では、日本風に ダンボール と書くことにした。

【科学教育革新運動とダンボールのカリキュラム】
ここ20年の米国の教育革新運動のひとつの拠点は、東海岸のボストンを中心とするものであろう。
まず、ここには有名な大学が集まっている。
ハーバード大学、マサチュセッツ工科大学(MIT)を筆頭に、BUと略称されるボストン大学、郊外には キャントン聖心女子大学などもある。
大学以外にも落とせない研究活動をしている組織として、教育開発センター(EDC)がある。

この教育開発センターは、数多くの教育改革計画を推進してきたことで有名だが、なかでも、三大小学校カリキュラムのうちのひとつESS計画を開発研究し、その普及活動をしてきたきたことは 多くの人々の記憶に新しい。

ダンボールを使う学習活動にいちはやく着手したのも、この教育開発センターである。
まず、1968年夏、全米から20名の学校の教員を招き、「ダンボールによる製作研究会」 (Cardboard Carpentry Work shop) が催された。

これは、単に理論的な研究をするだけにとどまらず、むしろ 実際の製作方法を研究する会 と呼ぶべき性格のものであった。
この会には、英国から2名の教員も特別参加し、計22名であった。

この第一回のダンボールのワークショップの様子は、「ダンボールによる製作研究会」 (Cardboard CarpentryWorlshop) という20ページばかりの写真集としてまとめられた。
現在入手できるダンボールの学習活動の もっとも初期の資料であろう。発行は、教育開発センター(EDC)である。

身近に、しかも豊富にあるダンボールが、どのように活用できるか、
いきなり子どもたちにぶつけるのではなくて、教師自らが取り組んでみようといういきかたに、彼らの行動力と精神の柔軟さを見る思いがする。
そして、このワークショップの成果と経験をもとにして、ダンボールの学習活動の試みが、全米各地で、試みられるようになる。
1976年初頭には、ダンボールの教育カリキュラム
A Cardboad Curriculum for for Children という広汎な教育計画と、そのための学習材料、資材の開発が 集大成されるに至るのである。



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